プロジェクトマネージャーに抜擢されたが、右も左も分からないぜ!
というあなたに向けて、プロジェクト進行の骨子を説明するよ!
この記事は3部構成でお届けしています。
前編で、一般的なシステム開発プロジェクトの全体像を、
中編で、プロジェクト開始直後の具体的な進め方を、
後編で、プロジェクトマネージャーが力を入れるポイントと考え方を説明します。
前編、中編がまだの方は、以下からお読みいただければと思います。
- プロジェクトマネージャーってやること多すぎませんか?
- プロジェクトマネージャーが一番頑張るタイミングはいつ?
- テーラリングという考えを知る
- 全ての活動はQCDとプロジェクトチームの幸せのために
プロジェクトマネージャーってやること多すぎませんか?
ここまで、プロジェクトの全体像と序盤の進め方を学んできました。
情報が多すぎて辟易している頃だと思いますが、これらの記事はあなたの心を折ることが目的ではありません。
前編、中編と解説してきた仕事の数々は、プロジェクトマネージャー一人でこなせる仕事量を優に超えています。
ではどうするのかというと、プロジェクトメンバーに手伝ってもらえば良いのです。
(場合によってはクライアントにも手伝ってもらってOK)
例えば、中編の記事で解説したプロジェクト憲章や計画書、WBSなどのドキュメントも、
ページの単位で分解してメンバーに作成をお願いできないか、相談してみましょう。
このとき、以下に注意して依頼するようにしましょう。
- 必ず「相談」として会話し始めること。
- 相手の都合(忙しさやスキルなど)を考慮すること。
- 依頼する成果物のゴールイメージ(成果物の目的、求める完成度、想定読者など)を明確に伝えること。
- 締め切りを決めること。その締め切り日に、成果物がどういう状態であることが望ましいかも伝えること。
上記を全て満たさなければ、それはただの丸投げです。(一番嫌われるやつ)
しかし、プロジェクトマネージャーになりたての頃は、
プロジェクトマネージャー自身が、プロジェクトの進め方や成果物のイメージを持てていないことがあります。
その場合は、正直に相手に伝えましょう。「分からないから助けてくれ」と。
プロジェクトメンバーの方が、プロジェクトマネージャーよりも経験豊富な場合もあります。
もし相談先のプロジェクトメンバーでも分からない場合は、次の他のメンバーや上長に相談すれば良いのです。
プロジェクトマネージャーが一番頑張るタイミングはいつ?
これはズバリ最初の方です。こんなイメージでしょうか。
プロジェクトマネージャーの最初の仕事は、プロジェクト初期の混沌とした状況に秩序をもたらし、
向いている方向がバラバラのメンバーのベクトルを合わせ、見通しを立て、自走を促すことです。
ゼロからイチを作るような作業なので、プロジェクト初期が一番大変です。
しかし、プロジェクト最初期~初期をうまく処理できれば、中〜後期は楽というか、あまりやることがありません。
プロジェクトマネジメントの原理原則に、「品質は上流で作り込む」というものがあります。
ここで言う「上流」とは、要件定義や設計だけを指すのではなく、初期のプロジェクトのリードも含みます。
逆に、プロジェクト初期に信頼関係の構築や見通しを立てるのを失敗すると、
大抵の場合、出たとこ勝負のバタバタプロジェクトになります。
そうなると、プロジェクトメンバーが疲弊し、成果物の品質が低下し、納期やコストに影響してしまいます。
プロジェクトの是非は、開始直後でほぼ決まってしまうのです。
テーラリングという考えを知る
この記事では、前編でプロジェクトの全体像を、中編で初期の進め方(成果物)を説明してきましたが、
傍目に見てもやることが多すぎて大変そうですよね。(実際大変なんですけど)
そこで出てくるのが「テーラリング」という考え方です。
テーラリングとは、「(洋服の)仕立て、仕立て直し」という意味で、
自分に合ったスーツを作ってもらうことを「テーラーメイド」と言ったりします。
勘の良いあなたは既にお気づきのことと思いますが、
プロジェクトにも「テーラリング」という概念があり、そのプロジェクトの特性を基に、やることを減らしたり増やしたりします。
そう、ここまでお伝えしてきたプロジェクトの作業は、必ずしも全てやる必要はありません。
ただ、このままでは単なる手抜き推奨記事になってしまいますので、大事なポイントをお伝えします。
「その成果物を作らなくても、プロジェクトの品質に影響しない」(または、かかるコストの割に、品質への貢献が少ない)と、
合理的に判断できる場合に限り、その作業をやらないと決めることができます。
効果の見合わない投資はしない、という単純なお話です。
※蛇足ですが、「時間や人が足りないから」といった理由などで作業を廃止するのは当然NGです。
全ての活動はQCDとプロジェクトチームの幸せのために
プロジェクトマネジメントには「QCDを担保する」という考えがあります。
「QCD」は以下の英単語の頭文字を並べたものです。
- Quality(品質)
- Cost(コスト)
- Delivery(納期)
プロジェクトで行う活動は、全てQCDに貢献するものである必要があります。
逆に言うと、QCDへの貢献度が低い活動は、やることを減らす、優先度を下げる、実施しない、といった判断をしてもOKです。
前章のテーラリングとも関連しますが、プロジェクトのそれぞれの活動のQCDへの貢献度は、
プロジェクトの性質(プロジェクトの規模や参加者、開発内容など)に依存するため、一概には言えません。
まずは、前編で描いたプロジェクトの活動全容を元に、それぞれの活動の目的を考え、
意味があると思えるかどうかで取捨選択をしていくと良いと思います。
※基本を押さえるという意味で、一度一通りやってみて、そのうえで捨てる判断をするのがお勧め。
また、QCDと同様に私が重視しているのは、プロジェクトチームの幸福度です。
これは社内外問わず、参加者の全員が対象ですが、特に社内側のプロジェクトメンバーの幸福度を最優先に考えます。
プロジェクトの活動は、QCDと同時にプロジェクトメンバーの幸福度に貢献するものである必要もあります。
以下のように、何故それをするのかを、メンバーに対して明確に説明できると良いでしょう。
- そのプロジェクト進行上の、未来の自分たちの助けになる
- 次のプロジェクト進行が楽になる
- 各自の成長に繋がる、など
社内のプロジェクトメンバーの幸せなくして、品質の良いアウトプットはできません。
プロジェクトのQCDとメンバーの幸福度は、密接に繋がっているのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
最後に、前編~後編の記事でお伝えした内容を整理してみましょう。
- (前編)プロジェクトの全容はこうなっているよ!
- (中編)プロジェクトの最初の頃の仕事はこんな感じだよ!
- (後編)プロジェクトは最初が肝心!QCDとプロジェクトメンバーの幸せへの貢献度を基準に活動を取捨選択しよう!
私も、日々改善の繰り返しです。
上手くいかないことがあると、次のプロジェクトではこうした方が楽かな?などと考えながら進めています。
(プロジェクトをやっていてしんどいのは嫌なので)
より良いプロジェクト進行を目指して、一緒に頑張っていきましょう!
これらの記事があなたのプロジェクト運営の一助になれば幸いです。
当記事のステップアップ図書
マンガでわかるプロジェクトマネジメント
プロジェクトマネージャーの仕事を追体験できる良書です。
漫画と侮るなかれ。プロジェクトマネジメントの実務に必要な要素は網羅されています。
全体の把握にはもってこいで、私は躓くたびに読み返しています。
「プロジェクトマネジメント」実践講座
私が勝手に敬愛する伊藤大輔さんの本です。
実践寄りの本ですが、未経験者が読んでも理解しやすいと思います。
(この方は、物事をかみ砕いて説明するのがとても上手です。)
困ったところだけをピンポイントに読めるようになっている構成も秀逸です。
プロジェクトマネジメント標準 PMBOK入門(PMBOK 第7版対応版)
個人的に、PMBOKの入門書で一番優しいと思う一冊です。ページ数も少ないです。
しかしPMBOKやプロジェクトの工程は一通り押さえており、入門や全体の振り返りに適しています。
この手の本(PMBOKの解説書やプロジェクトマネジメントを説いたもの)は、著者の経験が織り交ぜられて語られることが多く、抽象的で理解しづらい本が多いですが、この本はそういった面が薄いのでお勧め。
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このブログは、日本のプロジェクトマネージャーの仕事のレベルを底上げし、
本人とそのチームの人々の人生を幸福にすることを目的に、プロジェクトマネージャーの仕事に関する記事を書いています。
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