プロジェクトが進むにつれて、特定のメンバーに負荷が集中したり、
その結果としてアウトプットの品質が下って困った経験はありませんか?
それ、もしかして役割分担に無理があったかも?
- プロジェクトの職務の定義、してますか?
- 職務定義をしないと何が起きる?なぜ細かく職務定義をするのか
- <職務定義の目的1>仕事の穴を無くし、メンバーの負荷を平準化する
- <職務定義の目的2>プロジェクトメンバーに能動的に動いてもらう
プロジェクトの職務の定義、してますか?
「プロジェクトの職務定義」とは、あまり聞き慣れない言葉だと思います。
まずはどんなものか見てみましょう。
※エクセル形式などでダウンロードして、ご自由にお使いください
早い話が、プロジェクトを通じて、チーム内の「誰が何をするか」が書かれているものになります。
なんだそんなことか、と思われるかもしれませんが、
このステップをしっかり踏むことで、プロジェクト進行中に発生するいくつかの不幸を防ぐことができるようになります。
次の章で見ていきましょう。
職務定義をしないと何が起きる?なぜ細かく職務定義をするのか
実は、「職務定義を全くしていません」というプロジェクトは、基本的にありません。
プロジェクトマネージャーの皆さんは、大なり小なり同様のことをされているはずです。
例えば以下のような具合です。
「Aさんは今回のプロジェクトではPLをお願いね。BさんはSEね。CさんはPGをお願い。」
小規模なプロジェクトなら、この粒度でも問題ないかもしれません。
しかし、プロジェクトの規模が大きくなって、タスクの数や作業量が大きくなってくると、
下記のようなまずいことが起き始めます。
- プロジェクトの途中で要員不足が分かり、メンバーの負荷が増える
- メンバー各自の作業範囲が明示されていないため、仕事の抜け漏れがが発生する
- 上記2つの理由から、プロジェクトに対する意欲と責任感が低下する
プロジェクトがある程度進行した状態で上記を是正するには、
ある程度の時間と、メンバー間の摩擦や紛争を覚悟する必要があります。
例えば、
・人が足りないから、新たにDさんに参画してもらおう
⇒Dさんの教育コストかかり、結果的にそれほど楽にならない。あるいはさらに負担が増える。
・この仕事が漏れていたから、Bさんお願いね
⇒「聞いてません。他のタスクがあるから受けられません。」と、断られる。
こんなことではプロジェクトの成功も怪しくなります。
そんなわけで、職務定義の目的とやり方をもう少し深掘りしていきましょう。
<職務定義の目的1>仕事の穴を無くし、メンバーの負荷を平準化する
ゴールを簡単に書くと、「大雑把に仕事を書き出して、役割分担を決めてしまう」ということです。
プロジェクトの開始前にこれをやっておけば、「この仕事の存在を忘れてたね」というエラーを防げるとともに、
効率の良い、無理のない要員配置が可能となります。
特に、「文書作成の要員」をきちんと確保しておくことが大切です。
これはどういうことでしょうか。
例えば、プロジェクトマネージャーが兼任することの多い、要件定義の業務について考えてみましょう。
ある機能の要件定義の作業を分解すると、主に以下の8ステップに分けられます。
順番 | 作業内容 | 作業の種類 | かかる時間 |
---|---|---|---|
1 | 対象の機能の仕様案を考える | 思考 | 2時間 |
2 | 1で考えた内容を仕様書に書き出す | 仕様書の作成 | 2時間 |
3 | 設計者と仕様書をレビューし、修正する | 会議+仕様書の作成 | 0.5時間+0.5時間 |
4 | クライアントと仕様書をレビューし、修正する | 会議+仕様書の作成 | 1時間+1時間 |
5 | 4で修正した仕様書を再度設計者とレビューし、修正する | 会議+仕様書の作成 | 0.5時間+0.5時間 |
6 | 再度クライアントと仕様書をレビューし、合意する | 会議 | 1時間 |
7 | 合意した内容で仕様書を更新する | 仕様書の作成 | 1時間 |
8 | 確定した仕様を、設計者・開発者に説明する | 会議 | 0.5時間 |
(作業時間の内訳) | |||
仕様を考える時間+コミュニケーションの時間 | 5.5時間 | ||
仕様書を書いている時間 | 5時間 |
作業内容やかかる時間はあくまで一例ですが、
「仕様を考えてそれを調整する時間」と「資料を作成する時間」は、大体1:1の比率にあることが分かります。
そう、文書の作成って時間がかかるんですよ。
プロジェクト全体で見ると、複数の機能の要件定義が並走するうえ、
仕様変更に伴って、影響する過去の仕様書も修正する必要が出てくるため、
プロジェクトが進むにつれて、仕様書の更新に必要な時間は雪だるま式に膨らみます。
これは「誰かとコミュニケーションを取り、何かを決めて、それをまた別の誰かに伝える」という種類の仕事で発生することが多く、
プロジェクトマネージャー、要件定義担当者、設計者などの役割が、特にそれに該当します。
ごく小規模なプロジェクトでもない限り、
「思考」と「コミュニケーション」と「文書作成」を1人のメンバーにアサインすることは避けると良いでしょう。
特に、設計者がプログラマーも兼任するようなアサインはもってのほかです。
(大抵の場合、設計書の更新が追い付かなくなる)
<職務定義の目的2>プロジェクトメンバーに能動的に動いてもらう
ここでやりたいことを、プロジェクトマネージャーとメンバーのやり取りで書くとこうなります。
プロジェクトマネージャー:この仕事、任せてええか?お前が適任やと思うねん。
メンバー:ええで。
プロジェクトマネージャー:ほな、ある程度好きにしてええから、責任持ってやってな。あと、困ったらいつでも相談してな。
メンバー:おっけー。
ここで押さえるべきポイントは下記になります。
- 仕事の内容と、そのメンバーに依頼する理由と期待値(目標)、求める品質などを説明する(動機づけ)
- 引き受けてもらえる場合、それに伴う責任を理解してもらう(必達事項の説明)
- あくまでメンバー本人の意思を尊重し、無理に頼まない(合意形成)
- 困ったときの相談先があることと、やってみてダメなら途中棄権ができることを説明する(救済措置の説明)
こうすることで、双方に下記のメリットが生まれ、Win-Winの関係になります。
全ての仕事の割振りが終わったら、
プロジェクトメンバー全員で集まって、メンバー全員の仕事の割り当てに無理がないかを確認し、合意します。
ね、難しくないでしょう?
単純に仕事を任せる相談をして、了解を取っているだけです。
ただし、プロジェクトマネージャーは下記の点に注意してください。
- 仕事を任せるときに相談した目標(ゴール)を一方的に動かしてはいけません。
それは不誠実です。やむを得ない理由がある場合は、しっかり相談すること。 - 「相談を受ける」や、「交代の場合の要員調整」という約束は守ってください。
リカバリの体制を予め関係者と相談しておくと良いです。 - 未経験の職務にチャレンジするメンバーがあれば、潰れないよう、常に観察を怠らないでください。
自分の口から「無理です」と言い出せないメンバーもいます。真面目な人は特に抱えやすいです。 - 人心掌握術を極端に利用した無理な動機づけや、二枚舌はNGです。誠意をもってメンバーと接してください。
全体に通じますが、これが一番大事です。不誠実な態度は、後でほころびを生みます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
プロジェクト開始前に仕事を割り振ってしまうことで、防ぐことのできる「こんなはずじゃなかった」は数多くあります。
負荷の偏り防止、メンバーの成長、プロジェクトの品質向上などなど。
テンプレートを使って、是非一度トライしてみてください!
実施のタイミングは、チーム編成時に一緒に行うと良いでしょう。
あなたのプロジェクト進行の一助になれば幸いです。
当記事のステップアップ図書
「プロジェクトマネジメント」実践講座
私が勝手に敬愛する伊藤大輔さんの本です。
実践寄りの本ですが、未経験者が読んでも理解しやすいと思います。
(この方は、物事をかみ砕いて説明するのがとても上手です。)
困ったところだけをピンポイントに読めるようになっている構成も秀逸です。
完訳 7つの習慣 人格主義の回復
本当は今回の記事で一番読んでほしい本です。(私の人生バイブルの一冊)
ただ、ページが多いのと、書かれていることが深すぎて生涯に渡ってお付き合いするような内容なので、
まずは次に紹介するマンガから入ると良いかもしれません。
ただ、持っておいて損はない一冊です。
まんがでわかる 7つの習慣
7つの習慣の概要を、マンガで易しく学ぶことができます。
7つの習慣の著者(コヴィー博士)の真意を知るには少し情報不足ですが、
1~2時間程度で読めますので、入門にお勧めです。
当記事の関連記事
このブログは、日本のプロジェクトマネージャーの仕事のレベルを底上げし、
本人とそのチームの人々の人生を幸福にすることを目的に、プロジェクトマネージャーの仕事に関する記事を書いています。
私自身も道半ばゆえ、至らぬ点も多々あるかと思いますが、記事の感想やリクエストをいただければ
できるだけ記事にしてお応えしますので、皆様の忌憚のないご意見をいただけますと幸いです。
コメント