プロジェクト進行の極意「先んずれば人を制す」

「色々な人の横やりでプロジェクトを思うように進められない。」

そんな経験が一度でもあるあなたに向けて、対人調整の極意を伝授するよ!
まずはこれをマスターしよう!

  • 「先んずれば人を制す」って誰の言葉?どういう意味?
  • 人は「問い」に対して「答え」を返すようにできている
  • これを実践するとどうなるのか、実践しないとどうなるのか
  • このとき、相手の頭の中では何が起きている?

「先んずれば人を制す」って誰の言葉?どういう意味?

これは殷通(いんとう、いんつう)という、2000年くらい前の中国の人の言葉。
殷通は項羽(有名人)の伯父さんで、項羽と組んで奏の国や劉邦(りゅうほう)と戦いました。

意味は文字通り、「人を制しようと思ったら、相手より先に動きなさい」というもの。

「先手必勝」という近い意味の言葉もありますが、
「先んずれば人を制す」は、より具体的で、核心を突いた言葉といえます。


では現代に戻りまして、これがプロジェクトマネジメントにどう効果があるのかを考えていきましょう。

以前の記事で、「プロジェクトとは、人である。」と書きました。
様々な考えと背景を持った人々の集まりがプロジェクトであり、それゆえうまく進みづらいのだと。

そこで、人々の意見を取りまとめたり、一定の方向に誘導する際に威力を発揮するのが、
「先んずれば人を制す」の考え方になります。

思い通りに物事を運びたかったら、最初のアプローチは自分から行うようにしていきましょう。

人は「問い」に対して「答え」を返すようにできている

人は基本的に、「問い」に対しては「答え」を返すように教育されています。
言い方を変えると、人は投げ掛けられた「問い」に、「答え」の範囲を制約されるのです。

勘の良いあなたは既にお気づきかもしれませんが、これをプロジェクトの対人調整に応用すると、
相手に「問い」を投げ掛けることで、意図的に相手の「答え」に制約を設けることができるのです。
これは実は凄いことなのです。

「○○の方針で行くのはどうか?」と聞かれれば、
YES or NOで回答したくなりますし、

「A案とB案のどちらが良いか?」と聞かれれば、
A or Bで回答したくなります。
(正確には、そう回答する方が、あれこれ考えるよりも脳のリソース消費が少ないため、楽な方に流れる。)

そして、その「ルール」や「制約」を設定できるのは、先に「問い」を投げ掛ける側だけが持つ特権なのです。

これを実践するとどうなるのか、実践しないとどうなるのか

今、プロジェクトマネージャーのあなたは、クライアントである相手と、ある物事の方針を決める必要があるとします。
あなたとクライアントの間には信頼関係があり、お互いに相手の意見を尊重する間柄です。

そして、その方針に対する考えは、下図の通り二人の間で大きな開きがあるものとします。

1.あなたから先に切り出した場合

あなたは下図の赤い線の方針で行きたいと、相手に伝えました。

すると、相手はあなたの意見を基準に、できるだけ自分の希望に近づけようとします。

話し合いの結果、赤い点線の結論に着地しました。
おめでとうございます、あなたの希望に比較的近い方針です。

2.相手から先に切り出された場合

あなたは、下図の青い線の方針で行きたいと、相手から言われました。

結果はもうお分かりですね。

あなたは相手の意見を無視できません。
相手の意見を尊重しつつ、できるだけあなたの希望に近づけようとします。

その結果が以下の青い点線です。
残念ながら、あなたの希望とはほど遠い結論に着地しました。

人は、自身が置かれた状況をもとに、次の行動を思考する性質があります。
つまり、少なからず相手の意見に考えが引っ張られるため、このような結果になりやすいのです。

尚、相手に先手を取られても自分の方針を押し通したい場合、
相手の意見を起点に交渉する必要が出てくるため、下図のように説得に倍の労力が必要になります。

このとき、相手の頭の中では何が起きている?

前述の方針調整で、あなたは相手に対して先手を取ることができました。
この時、相手の頭の中で起きていることを見てみましょう。

当初相手は、自分の考えで頭がいっぱいでした。当然ですね。
相手はあなたを説得する手立てを色々と考えています。

ここであなたが先手を打ち、相手に意見を伝えました。
すると、相手の脳みそはあなたの意見の解釈にリソースを割くため、元々あった自分の考えを隅っこに追いやります。

これは自分の考えをただ記憶しているだけの状態ですね。
おまけにその記憶はあなたの意見にも影響され、変質・劣化していきます。
人間は一度に一つのことしか考えられませんので、これによって相手の脳のリソースを占有することができます。

そして相手は、あなたの「問い」で発生した「制約」に縛られつつ、「答え」を返すのです。

「先んずれば人を制す」とは、この現象を利用した手法なのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

先手を打つことで、相手に課す制約は自由にコントロールすることが可能です。

先手を打てるほど自分の考えに自信が無い?そんなのはやっていれば出来るようになります。
まずは行動変容に取り組んでみましょう。結果が明らかに変わりますよ!

以上、あなたのプロジェクト運営の一助になれば幸いです。

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