プロジェクトの進捗が遅れがちで悩んでいるプロジェクトマネージャーさんに朗報です。
それ、朝会の実施で解決できるかも?
朝会の目的とやり方を学んでいこう!
- チーム内の情報流通量と速度がプロジェクトの成否を分ける
- 結成初期のプロジェクトチームのパフォーマンスは低い
- メンバー間のコミュニケーション量を増やす
- 朝会のやり方とプロジェクトマネージャーの心得
チーム内の情報流通量と速度がプロジェクトの成否を分ける
上記の表題がこの記事の結論であり、朝会の目的です。
進行のスムーズなプロジェクトというのは、
そうでないプロジェクトと比べてチーム内の情報の流通量と速度が高い傾向にあります。
プロジェクトは団体競技です。
チーム内に情報格差があると、メンバーが力を出す方向やタイミングがまとまらず非効率であることと、
作業の手戻りの発生などで、チームの士気も下がります。
プロジェクトを船の運航に例えてみると分かりやすいと思います。
プロジェクトマネージャーである船長は、辺りを遠くまで見渡せる艦橋に立ち、目的地とルートを決定します。
プロジェクトメンバーであるクルーは、それぞれの持ち場に就き、各々の仕事に専念します。
これで目的地まで何の障害もなく運航できれば良いのですが、中々そうはいきません。
ルート上の障害物や天候の急変、それぞれの持ち場で機器の故障などが発生するでしょう。
このような想定外のことが発生したとき、どれだけ早くチーム内で共有できるかが、
この船の安全な運航のカギになってきます。
これはプロジェクトにおいても同じことが言えるのです。
結成初期のプロジェクトチームのパフォーマンスは低い
プロジェクトチームも、ヒトと同じように成長の段階があります。
教育心理学者のブルース・タックマンが1970年頃に提唱した、「タックマンモデル」が有名です。
項番 | 成長の段階 | 概要 |
---|---|---|
1 | 形成期 | メンバーが決まり、目標や課題を共有するが、お互いのことはよく分かっていない時期。 |
2 | 混乱期 | アプローチや役割を模索するが、メンバー間で価値観や優先順位の違いがぶつかり合う時期。 この時期はリーダーにとってもメンバーにとっても苦しい時期だが、 ここを避けて一足飛びに規範確立期に行くことはできない。 ここを避けていると、いつまで経っても本当のチームにはならない。 |
3 | 規範確立期 | チームとしての行動規範や役割分担が形成される時期。 |
4 | 活動期 | チームとして機能し、成果が生み出される時期。 |
タックマンモデルで今回重要なことは、次の2つです。
- プロジェクトチームには成長の段階があり、その中には苦しい時期もある。(上記の1,2の段階)
- 成長は一段階ずつする必要があり、一足飛びの成長は無い。
このことを予め知っておくことで、
結成初期のプロジェクトチームのアウトプットの低さを、チーム全員で受け入れることができます。
ヒトで言えば思春期や反抗期みたいなもので、ごく普通のことなのですから。
で、どうやって成長していけばいいのさ?という疑問が湧くと思いますが、
答えはコミュニケーションによる相互理解の促進です。近道はありません。
お互いに自己開示し、相手を理解することに努める、これに尽きます。
メンバー間のコミュニケーション量を増やす
横方向(メンバー間)のコミュニケーション量を増やすことも重要です。
次の絵を見てみましょう。
(A)はプロジェクトマネージャーを介してコミュニケーションを取る組織構造になっています。
プロジェクトマネージャーの処理能力に余裕があるうちはこれでも機能しますが、
大抵の場合、プロジェクトマネージャーは各所で起きるトラブルの対応に追われています。
すると、情報の伝達に時間がかかったり、伝言ゲームによる情報の劣化が起きるため、
プロジェクトチームの行動の遅れや、判断ミスに繋がります。
一方で(B)は、メンバー間のコミュニケーションを奨励する組織構造になっています。
前提として「プロジェクトの目的」が、チーム内でしっかり浸透している必要がありますが、
その「目的」に沿って各メンバーが自律的に判断し、物事を進めていけるため、
チームの自立性が高まると共に、メンバーの成長も期待できます。
朝会のやり方とプロジェクトマネージャーの心得
ここまで長々とコミュニケーションの重要性について書いてきたわけですが、
その最適な場が「朝会」というわけです。
ただこの朝会、気を付けるべき点もあります。
<注意点その1>結構なコストがかかる
大抵の場合、朝会は毎日実施します。
すると、「参加人数 × 開催時間」のコストが日々発生します。
しかも、プロジェクトの規模が大きくなると、参加人数と開催時間が膨らむ傾向にあります。
プロジェクトマネージャーは、コスト意識をもって議論の交通整理を行う必要があります。
ただ、「無駄話」ができる雰囲気も大切ですので、そこはさじ加減を調整してみてください。
<注意点その2>何を言っても許されることを保証する
プロジェクトチームが成長していくためには、メンバーの相互理解が必要だと書きました。
そのためには活発なコミュニケーションが欠かせません。
しかし、「こんなこと言って大丈夫かな・・」という雰囲気があると、
本音の会話がしづらくなるため、結果としてコミュニケーションの量が減退します。
プロジェクトマネージャーは全員の前で、「何を言っても許される」ことを宣言し、それを行動でも示しましょう。
朝会のアジェンダ例
最後に、60分コースの朝会の進め方の例を紹介して終わりにしたいと思います。
<パート1>まずは全体の報連相の実施(10分)
内容、粒度、発言者は自由で、些細な物事の共有も促します。
時間を要しそうな議題は、パート3での議論にまわしましょう。
<パート2>プロジェクトの課題管理表のレビュー(20分)
課題の量が多い場合は、ホットトピックを事前にピックアップしておき、レビューの時間を節約しましょう。
<パート3>必要な人だけ残って、込み入った課題を議論する(30分)
パート2までで全員参加の朝会は一旦切り上げ、パート3では関係者だけ残って議論が必要な課題を処理しましょう。
上記はあくまで一例で、進め方は自由です。
是非チーム全員で進め方を相談しながら、実践してみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
プロジェクトで発生する諸々の課題は大抵話し合いで解決しますし、それが健全です。
「朝会」という場を設けることで、それが勝手に促進されるわけですから、使わない手はありません。
以上、あなたのプロジェクト運営の一助になれば幸いです。
当記事のステップアップ図書
外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント
今回の記事は、この本を参考に書かせていただきました。
人間模様を軸にした、プロジェクトマネジメントの教本で、
個人的意見ですが、目指すべきプロジェクト運営が分かりやすくまとめられています。
是非読んでみてください。
「プロジェクトマネジメント」実践講座
こちらの本も、チーム形成について詳しく書かれています。
実践寄りの本ですが、未経験者が読んでも理解しやすいと思います。
(この著者は、物事をかみ砕いて説明するのがとても上手です。)
困ったところだけをピンポイントに読めるようになっている構成も秀逸です。
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プロジェクトチーム憲章を書こう(仮題・執筆中このブログは、日本のプロジェクトマネージャーの仕事のレベルを底上げし、
本人とそのチームの人々の人生を幸福にすることを目的に、プロジェクトマネージャーの仕事に関する記事を書いています。
私自身も道半ばゆえ、至らぬ点も多々あるかと思いますが、記事の感想やリクエストをいただければ
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