「この資料の目的は何?」
こんなセリフを上司や同僚から言われたことはありませんか?
自分としては目的をもって書いているつもりなのだけど、この指摘が多い・・・。
と、モヤモヤしているあなた。
人が文書を書く本当の目的を一緒に学ぼう!
- 【結論】人が文書を書く目的は、他人の行動を変容させるため
- その資料全体、その中の1ページ、その中の一文、一節。全ての要素が一貫した目的を持つ
- 【テクニック1】情報は必要最小限が良い。大目的に貢献しない要素は思い切って捨てるべし
- 【テクニック2】その1ページで達成したいことを見出しに書くべし
【結論】人が文書を書く目的は、他人の行動を変容させるため
これが今回お伝えしたい原理原則です。
突然ですが、人類が「話し言葉」や「書き言葉」を発達させてきた理由はなんでしょうか?
それは自分以外の誰かに、何かを伝えるためにほかなりません。
では何故、「誰かに何かを伝える」必要があるのでしょうか?
それは自身の「得」になるように、相手の行動に何らかの影響を及ぼすため、となります。
(その集団の中で生き残るために、自身が有利になる「噂話」を流すことが、コミュニケーションの始まりと言われています。)
原始時代の話に聞こえるかもしれませんが、この原理原則は、身の安全が保障された現代でも変わっていません。
いくつか例を挙げてみましょう。
(分かりやすいように、「コミュニケーション全般」に範囲を広げて書いています。)
- 同僚や友人に愚痴る
⇒聞き手に共感してもらい、自分の考えが間違っていないことを確かめて安心したい。 - SNSに動画コンテンツを投稿する
⇒多くの人に閲覧してもらい、広告収入を得たい(または、多くのいいねをもらって承認欲求を満たしたい)。 - テレビの天気予報で雨を伝える
⇒視聴者に傘を持たせたい。有益な情報を提供し、番組を多くの人に見てほしい。 - テレビやラジオのCM
⇒自社を認知させたい。問合せしてほしい。商品を買わせたい。 - 仕事で資料を書く
⇒承認が必要。正確に作業してほしい。確定した物事をひっくり返させない、など。
是非、あなたご自身の周辺のケースでも確かめてみてください。
ほとんどのケースで、「相手の行動変容」という目的が最深部にあるはずです。
逆に言うと、相手の行動変容が少しも伴わないビジネス文書には価値が無い、と言えます。
残酷ですが、これは真実です。
その資料全体、その中の1ページ、その中の一文、一節。全ての要素が一貫した目的を持つ
さて、仕事で作成する文書に絞って、話を具体化していきましょう。
「その資料全体、その中の1ページ、その中の一文、一節。全ての要素が一貫した目的を持つ」とは、
一体どういうことでしょうか?
これは、その資料に登場するすべての要素には、一語一句に至るまで一貫した目的が必要だ、ということです。
まず「1.資料全体」には、当然何らかの目的があります。
例えばこれが提案書なら、「提案を通して物事を進めたい」ということになります。
そしてその中の「2.その中の1ページ」は、「1.資料全体」の目的の達成に貢献するものでなければなりません。
例えば、この提案をするに至った背景を知ってもらい、決裁者の背中を後押しするためのページなどです。
(大抵の場合、その決裁者も提案を上申する立場にあります。その決裁者に「武器を与える」と捉えても問題ありません。)
さらにその中の「3.その中の一文」と「4.その中の一節」も同様です。
「2.その中の1ページ」を理解してもらうための、内容を端的に説明する見出しや、それに追随する本文です。
私は資料を書くとき、常に、
「この資料の目的は何?このページの目的は何?この1文の目的は何?、このグラフの目的は何?」
と、自問自答しながら書いています。
慣れるまでは苦労しますがが、意識し続けるとこでそれが習慣となり、
それほど時間を要さず自然体で出来るようになります。
【テクニック1】情報は必要最小限が良い。大目的に貢献しない要素は思い切って捨てるべし
陥りがちな失敗パターンとして、あれもこれもと、沢山の情報を詰め込んでしまうことが挙げられます。
まず、読み手は多忙だと知りましょう。また、デキる人ほど結論のみを求めます。
そんな読み手にとって、目的の不明慮な要素(冗長な文章、意図不明な色使いや文字の装飾、挿絵など)は、
雑音でしかありません。
100ページを超える資料(パワーポイントの提案書に多い)をよく見かけますが、あれは完全に自己満足の世界です。
1時間が精々の会議で全てを説明するのは不可能ですし、飛ばしたページが後で読み返されることもありません。
後で必要な情報を見返そうと思っても、不要な100ページに埋もれて情報が見つけづらく、
手離れした後も読み手の時間を奪います。
繰り返しますが、読み手は多忙なのです。
100ページの中から目的に貢献する本当に必要な情報だけをピックアップすると、大抵の場合、10ページ前後に収まります。
ちょっと素っ気なさ過ぎるかも、、、くらいで丁度良いのです。
目的に貢献しない要素は、資料に不要なのです。
内容が薄まることで意図が伝わりにくくなるため、百害あって一利なしです。
【テクニック2】その1ページで達成したいことを見出しに書くべし
大抵の人は資料を読むとき、
表題 → 目次 → ページ見出し → ページの内容
と読み進めます。
そのため、表題やページ見出しに、その資料やページであなたが達成したいことをそのまま書くだけで、
資料やページの目的や意図が、格段に読み手に伝わりやすくなります。
いくつか例を挙げてみましょう。
- 進め方を相談した上で、合意したいとき
「○○の進め方の段取りのご相談と合意」 - 仕様を検討したうえで、合意したいとき
「○○の仕様の検討と承認のお願い」 - 方針を相談したうえで、お客様先などの社内調整を進めてほしい
「○○の方針のご相談と、社内調整のお願い」 - 内容についてのフィードバックが欲しい
「○○のレビューとフィードバックのお願い」
そのままじゃないか、と思われるかもしれませんが、これで良いのです。
このように書けば、読み手はそのページの目的がすぐに分かるため、その後の会話がスムーズになります。
やりがちな失敗パターンその2。
「○○について」という言い回しは使わないようにしましょう。
摩擦を嫌う日本人ならではの言い回しですが、
これでは読み手が目的や意図をすぐに理解できないか、下手をすると本文まで読んでも理解できないという状態が発生します。
経験上、ビジネスの場でコミュニケーションの意図を濁して良い結果になることはまずありません。
私は「○○について」という言い回しを、普段から使わないようにしています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
私自身も、読者の皆さまの気づきと、行動(勉強)のきっかけとなることを目的に、
この記事を書いています。 ※今回、特に時間かかりました(笑)
細かいテクニックはまだ数多ありますが、
まずは「文書の真の本来の目的は、人を動かすこと」、という原理を念頭に置き、文書作成に取り組んでみましょう。
皆さまのより良い資料作成の一助になれば幸いです。
当記事のステップアップ図書
会社では教えてもらえない ムダゼロ・ミスゼロの人の伝え方のキホン
社会人に必須のスキルだが、教えてくれる人がいない分野を掘り下げた良書です。
書いてあることは当たり前のことばかりですが、意外にできている人は少ない印象。
コミュニケーションの本質が判っていると、仕事がとっても楽になります。
言語化してくれた著者の山口拓郎さんに感謝。
一生使える見やすい資料のデザイン入門 完全版
パワーポイントの書き方を中心とした、デザインのお作法の原理原則が学べる良書です。
全てを一度にマスターする必要はなく、使えそうなところから取り入れていけばOKです。
資料の書き方(分かりづらい、とか)を指摘されることが格段に減りますよ!
コンサル一年目が学ぶこと
少し毛色が違うように思うかもしれませんが、コンサルタントが資料を作るうえで必要なロジカルシンキングの基礎が学べます。
資料作りの枠を超えた本ではありますが、先のステップも見越した仕事のお作法まで書かれた超良書。
是非読んでみてください。
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